【活動報告】第2回桜沢如一研究発表大会

10月16日(日)に、日本CI協会セミナールームにて、生誕記念祭「第2回桜沢如一研究発表大会」を開催しました。

昨年第1回は、申込者100名を超える反響をいただきましたが、今年も60名を超えるお申込みがあり、発表者6名が高い熱量で大会を盛り上げました。中でも初参加で、アルゼンチンからの中継で参加したヒメナ・アルバレスさんの発表は、質問が止まず大きな反響があり、大会がより国際的な広がりを見せてくれました。

 

■高桑智雄室長による宇宙の秩序の成立と展開史

研究発表のトップバッターは、桜沢如一資料室の高桑智雄室長による「宇宙の秩序の成立と展開史」。桜沢思想の柱である「無双原理」の成立過程は、先行研究があるのに対し、もう一つの柱である「宇宙の秩序」の成立過程や展開はまだあまり整理されていないとし、桜沢68才の時の「宇宙の秩序の発見」という講義録を元に、年代別の資料の検証が行われました。

桜沢にとって「宇宙の秩序」とは、食養、無双原理に先立つ人生のテーマであり、食養に出会い無双原理を確立する過程で、宇宙の秩序の6つの同心円型入れ子構造から7つのスパイラル構造へと展開・完成していく過程が豊富な資料を元に論じました。

 

■研究来日中の人類学者オブライエン氏による桜沢の原子転換への提言

昨年、アメリカからZOOMで発表を行ったカリフォルニア州立大学サンディエゴ校大学院博士後期課程で桜沢思想の研究をする人類学者デュラン・オブライエン氏は、今回ちょうど研究来日中とあって、会場での発表を行いました。

テーマは「形而上学と錬金術~西洋哲学から見える元素転換」で、西洋の形而上学と錬金術の歴史から、桜沢の晩年最後のテーマである「原子転換(元素転換)」はあくまで無双原理を元にする世界観であって、決して西洋科学の文脈で証明することに成功をしていないのが現状とし、「原子転換(元素転換)」という科学的文脈でマクロビオティックを語ることに限界があると論じ、マクロビオティックはあくまで科学の文脈ではなく、東洋の哲学や無双原理で語るべきではないかと提案しました。

 

■アルゼンチンでマクロビオティックの普及活動を行うヒメナ・アルバレス氏による西洋世界における絶対性と相対性の問題

今回初参加のヒメナ・アルバレス氏はアルゼンチンから中継で、「マクロビオティック思想の相対性と絶対性~西洋で理解されにくい概念」と題して発表を行いました。

西洋社会でマクロビオティック思想を普及するヒメナ氏ならではの視点で、極陽と極陰の食べ物が多く二元論的に物事を捉えがちな西洋人にとって、桜沢の「宇宙の秩序」の根本である「絶対界への参入」が難しく、どうしても現代の西洋世界のマクロビオティックは相対界での理解、二元論的理解、物質的で実利的な傾向にあると指摘します。

これは西洋世界のみならず、日本のマクロビオティック界も残念ながら桜沢の「宇宙の秩序」への理解が薄く、ヒメナ氏が指摘する傾向にあると言えます。ヒメナ氏は、桜沢の貴重な遺産を近視眼的に矮小化するのではなく、絶対者、神、大自然、タオ、天の国との一体化において、マクロビオティックが持つ完全な変革の可能性を回復しなければならないと力強く主張しました。そして、先生も生徒も、自分の「内なる部分」、つまり最高判断力の開発に取り組むことが、今の時代の課題とまとめました。

 

■昨年大好評だった安藤耀顔氏の最新研究

昨年、その圧倒的な桜沢資料検証と広範な内外の思想・哲学をバックボーンに語られる安藤節は大好評でした。今年は、資料室にも未所蔵で幻とされていた「世界政府創刊号(月刊「マクロビオティックの第1号」の発見を機に、戦後桜沢が最も重要な活動として青少年を巻き込んで行った「世界政府運動」の本質を熱く語りました。

桜沢にとっての世界政府運動の根底には、日本への原爆投下を機に本格的な核の時代の到来の危機意識が大きく、晩年の活動は無双原理・宇宙の秩序を元にした真生活による人間革命で、個人や家族の健康と平和と幸福の実現することを全面に出していたが、桜沢は常にその先にある社会変革である世界政府による世界の健康と平和と幸福を目指していたことを様々な資料で示してくれました。

 

■元MI生の斎藤武次氏の現代社会への提言

研究発表の大トリは、元MI性の斎藤武次氏による奈良で選挙演説中に撃たれ、死亡した安倍首相の衝撃的な事件に絡んでの問題意識として、『〇廼家での回想』という桜沢の回想録が紹介されました。「ナゼ私は銃殺を逃れたか?」という副題があるこの抄録には、当時左翼、右翼に関わらず暗殺や処刑された多くの思想とそれを間逃れた桜沢の行動原理の違が語られます。

斎藤氏は今まさに不穏な時代をむかえる現代にこそ、桜沢の生命の指導原理を知ってもらいたいと語りました。

 

■マクロビオティックを後世へつなぐ桜沢如一刊行物電子化プロジェクト 支援金募集開始

桜沢如一資料室では、2022年10月16日より2023年3月31日まで、「マクロビオティックを後世へつなぐ桜沢如一刊行物電子化プロジェクト」として支援金の募集を開始しました。今回このプロジェクトで中心的活動をしている資料室司書ボランティアの村井友子氏より、電子化のメリットや行程、必要となる経費などの説明を行いました。

プロジェクトの詳細、支援金の入金先などは、下記を御覧ください。

マクロビオティックを後世へつなぐ 桜沢如一刊行物電子化プロジェクト 支援金募集要項

開会の挨拶として「マクロビオティックを後世へつなぐ桜沢如一刊行物電子化プロジェクト」の立ち上げを宣言する勝又初枝代表。

 

■閉会の挨拶として国内外の学術研究者の紹介

最後に閉会の挨拶として高桑智雄室長から、現在行われる国内外の学術研究者の紹介があり、ドイツのヴィクトル・フレーネの研究者であるエハード・ネッカーマン氏の研究、東京大学大学院博士課程でフランスの禅の受容における弟子丸泰仙と桜沢の研究をする輝元泰文氏、クッキングスクールリマのマスターコースを修了したデザインマネージメントの研究者、重本祐樹氏の川喜田二郎と桜沢如一の思想比較、工学領域の不便益におけるマクロビオティックの活用などの研究が紹介されました。

高桑室長は、学術研究の分野での桜沢への注目が確実に高まっており、そのためには桜沢資料室が出来るだけ早く資料の電子化を行い、内外に第一次資料を提供することが大切な時代であるとまとめ、支援金の協力を訴えました。

 

第2回の桜沢如一研究発表大会は、昨年にも勝る内容の濃いイベントとなりました。しかし、第3回、4回と続けるためには、もっと多くの研究を活性化し、新しい発表者を増やして行く必要があります。桜沢如一の思想や活動に関する研究だけでなく、自分の専門分野と桜沢思想との関連研究、桜沢如一の研究会や勉強会などの活動報告なも募集しております。

視聴者のみなさま、ぜひ第3回での発表をお待ちしております。

レポート
桜沢資料室 高桑智雄

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