NOIR et BLANC NO.377
医療を超えて ―あなたを癒す全ての方法― 377
「哲学が病気を治す事をオーサワの食養法が証明する」
記者:ジャン・パレスール
数十万人の病人へ治療ををさずけた、オーサワという日本人の食養法の元になる無双原理を西洋人にわかりやすくするため、まずは彼の弟子たちが≪指導者≫または≪センセイ≫と呼ぶオーサワの概念に至る様々な段階を知る事が必要であろう。
オーサワが初めてヨーロッパを訪れたところまですすめた(注1)。彼は≪全くの対症療法で化学的な薬と同じ事≫としながらもスリエ・ド・モランが鍼を開業するために手助けをする。
───同時に、私は華道と柔道(柔術)をはじめて持ち込んだ、と彼は言う。今日、華道と同様に柔道はヨーロッパで完全に市民権を得ている。しかし、柔道と華道の哲学である柔道や華道の≪道≫の研究に興味を持つものは少ない。≪道≫(中国語ではタオ)は無双原理を意味する。柔道と華道はつまり、無双原理の教育的、文化的そして生理学的なひとつの解釈であり、人生観、世界観である。
しかし、哲学者レヴィ-ブルールの『未開人の思考様式』という本を読みながら、西洋人の考え方と、東洋人の考え方には隔たりがあることに思い至る。
───私は非常に驚きました。なぜなら彼は未開人の思考様式についてまったく理解できないことを認め、その思考様式はまさに私のものと同じだったからです!
ためらうことなく、彼は誤解と思われる疑いを一掃するために科学アカデミーの一員でソルボンヌ大学の、傑出したその教授をみつけることにする。レヴィ-ブルールは彼の話しを聞き、真剣な様子でオーサワに向かって言う;≪未開人の思考様式は我々西洋人には全く理解できない、もしあなたがわれわれの言語でそれを説明することができるなら、あなたに多いに感謝します。≪完全に無理解≫とされるこのふたつの世界をへだてる壁を、あなたはあなたの側から、わたしはわたしの側から打ちくだかなければならない。≫オーサワは大喜びでその主題について、その高名な相手が著作のなかで引用した様々な例とあわせて、本を書く事を約束する。
───今日では確信しているが、その当時私は≪未開人の≫という言葉が軽蔑的な意味を持つ語であることを知らなかった。その反対に、名誉のあるものだと信じていました。私が帰った後、レヴィ-ブルールは彼の妻とどれだけ笑った事でしょう!
結局、彼はその本を書かなかった。なぜなら、彼は極東の医学と無双原理の深い意味を、彼と同時代の人々にわかってもらう努力をする方が有益だと判断した。日本に帰国し、その意味と重要性について説明することに専念し、彼自身の言葉によると≪ガイドー解釈者≫になるために努力した。彼自身が決めた任務を全うできる準備ができると伝道活動にのりだし、≪人生の最後まで旅をつづける≫ことを告げた。
50歳のときに、彼は全てを捨てる:家、書物、≪自分の手の一部のように20年以上も働き続けた≫タイプライター。彼の妻であるリマも彼に従い彼女の高価な楽器(彼女は日本で伝統音楽の教授をしている)やドレスや宝石を手放す。そして一緒に世界にむけて旅立つ事になる。彼らはインド、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ペルーへ行き、シュバイツアー教授に出会う北アフリカ(そのランバレーネにある病院でオーサワは『東洋医学の哲学』(注2)を書き≪親愛なるシュバイツアー先生≫に捧げる。)、そしてドイツ、ベルギー、イタリア、フランスへと向かう。
我々の国への到着は≪センセイ≫が好ましく思い出す、あるおもしろい出来事のおかげで印象に残っている。:マルセイユに降り立った時の事、カンビエール通りを散歩していると、突然リマが夫に聞く。:≪なぜここにはこんなにも椅子を商う業者がいるのでしょうか?≫それはカフェのテラスだったのである・・・。
≪こんなにも大勢の前で話しをするのはおそろしい≫と告白しながらも、オーサワは行くところはどこででも、おびただしい数の聴衆に向かって彼の考えを披露した。≪繊細にしかもとても深く重要なこと≫を扱わなければいけないので、小さな場所で10人程度の小さなグループに向けた話す方を好む。このことから、定期刊行物を発行するのが有効だと思いつき、≪センセイ≫は≪イグノラムスの家≫と名付けるセンターを設立する、オーサワが偉大な学者と尊敬している前世紀のドイツの生理学者であるエミール・ド・ボワ-レイモンドが人生の最期にこう言明しているからである:≪イグノラムス、イグノラビムス≫(何も知らない、知る事はないだろう)。
さらに、毎年7月と8月には、≪新しい学校≫と名付けるサマーキャンプを開き、そこで無双原理に基づいて、理論と実践の両方から健康を取り戻す方法について教える。この国際的な出会いはアメリカとフランス(特に今年のキャンプ)で大成功をおさめ、≪奇跡のキャンプ≫と呼ばれるように多くの治癒回復が見られ、オーサワも彼の新刊書の『原子時代と東洋哲学』(注2)の中で強調している。
───彼が言う、ある友人で医者のSさん(彼女自身、ひどい鬱病で1957年に回復している)から送られてきたハンブルグからきたドイツ人を思い出します。そのドイツ人はひどく苦しんでいた、いろいろと、リウマチと身体のゆがみで16年来も、そして医者のSさんも治す事ができなかった風変わりな熱をもっていました。その病人は私の日本人の子弟の一人によってパリの北駅から連れてこられました。松葉杖をついて彼の部屋でも数メートルしか歩けませんでした。
≪彼の状態はすぐに良くなりました。(言語の壁のせいで彼はあまりよく理解できませんでしたが)3週間の講習とわたしの厳格な食養指導を守って、松葉杖を手放しました。キャンプが終わったときに、≪生まれてはじめて地中海でおよぎます。私の小さい頃からの夢だったのです。≫と言って、彼の帰るべきニースへ出発しました≫
≪生まれつき耳が不自由でおしの18歳の少女が最初の週の終わりごろには車のクラクションが聞こえ、そのまねをするようになりました・・・≫
その≪奇跡的な≫治癒は無双原理の利点へ大衆の注意を引きつけるためには≪指導者≫の文章よりも多くの効果があると認めざるをえない。そしてオーサワは完全に納得している。;だから、彼の方法論があたえる治療法を≪無料でとる≫事はしてはいけないのだと繰り返していうのある。
───それは大きなまちがいである、と彼は断言する。あなた方がどうして不治の病であったのか、どうして治癒したのかを勉強し、理解し、自分のものにしなければいけない・・・。もしあなた方が皆にその鍵を対症療法的なただの治療薬のように見せてしまったら、あなたがたは再び病気になるでしょう、しかも重い病気に。
必要なのは、彼の著作を何度も読み、深く考え、≪奇跡の治癒≫の生きた証人であることを示し、その哲学を子供達や隣人たちに伝える事なのである。
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その哲学は≪西洋の大衆に理解させるのはとても難しいからと≫オーサワが長い間私たちに知らせるのをためらっていた無双原理の基になっている。確かに、≪万有の弁証論≫、≪生命と宇宙の概念-構造≫、そして東洋の全ての文明、科学、全ての宗教、哲学の基になるものである、その鍵は≪文明化した≫(レヴィ-ブルールによって≪未開人精神≫とシールを貼られた頭脳とは全く反対の)我々の頭脳を当惑させる。
これがオーサワの説明である。
───無双原理は部分的には分析的な方法ではある、しかし、他の大部分は統合するための分類である。つまり、それは偉大な総合の原理と呼ぶ事ができる。
≪無双原理では全てのものを二つの相反する範疇(カテゴリー)に分類する。:陰と陽・・・。それは、女性と男性、昼と夜のように、実際相補的でお互いに不可欠なものです。二つの全く相対する要因で、宇宙に存在するものすべてを創造し、生命を与え、破壊し、そして新たに再生する。
≪陽性の力より陰性の力がまさって構成されているものは≪陰≫と呼ばれ、反対の場合は≪陽≫と呼ばれる・・・。陰と陽はいつも相対的です。完全に陰や、完全に陽であるものはこの世には存在しません・・・。
≪この宇宙の中で全ての物事の特徴は、陰と陽という要素の割合と、組み合わせの方法によっており、根本的に対立する二つの力の産物でしかありません。
≪他の言葉でいうと、全ての現象、全ての物の特徴はその二つの力に影響をうけた形成物です:求心力をもつ陽と遠心力をもつ陰。≫
(注1)『黒と白』の912号を参照のこと。
(注2)パリ、ヴラン社より
※汁本記事は、原文をそのまま訳しているため、一部読みづらい箇所がございます。ご了承ください。
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