【活動報告】10/20「PDF書籍ライブラリー読書会」レポート
2018年10月10日に桜沢如一資料室にて、「PDF書籍ライブラリー読書会」を開催しました。
今回の課題図書は、1949年に発表された「フリップ物語」です。
桜沢は、1945年8月の終戦後、平和主義、民主主義の普及のための世界政府運動と世界に通用する人材育成に積極的に務めます。1953年に61歳にして、世界無銭武者旅行と称して、「サードハナ」号にてインドに渡る船中で執筆した本で、以降10年に及ぶアフリカ、欧米各国でマクロビオティックの普及活動を行うことになります。
「フリップ物語」は、冒頭に「GHQに日本版を出す様に許可され、スイセンされたアメリカのベストセラーの一冊」とあるように、アメリカの絵本作家で1940年代に活躍したウェズレー・デニスが書いた絵本 「フリップ物語」の翻訳本と共に出版した桜沢如一による解説本です。
翻訳本は、少年少女の英語習得の教材としての目的もあり、日本語と英語を並記させた形式となってます。
ウェズレー・デニスは馬の絵を描かせたら並ぶものがいないと言われた作家で、「フリップ物語」は、ケンタッキー州の農場に生まれた子馬が、母馬のように川を跳び越えたいと願いひとりで練習を重ねて跳べるようになるまでを美しい馬の描写と共に語られる物語です。
解説本は、終戦後の桜沢の平和主義、民主主義の普及のための世界政府運動と世界に通用する人材育成の活動を象徴した作品で、少年少女、そして敗戦で意気消沈する大人達に向けて、フリップのように最大の困難を喜びとして挑戦し「ジャンプ」することが、真の自由、真のデモクラシー達成の道であることを熱くといています。
また、決して答えを教えず、身をもって示す自学自習の教育法を実践する母馬に自身の母親の姿を投影させたり、4年後に実現する「世界無銭武者旅行」という桜沢にとっての人生最大の「ジャンプ」への意気込みを語ったりと、桜沢が原版「フリップ物語」を読んで自分の人生と重ね合わせてフリップに共感と感動をした姿が伝わってくる作品です。
実はこの作品について考察された学術論文が存在します。日本の絵本史を専門に研究していると思われる石川晴子氏は、占領下の時代における外国の翻訳絵本の事例は非常に少なく、日本の絵本史においても歴史的資料としての価値があると論じています。
桜沢の作品がアカデミズムに取り上げられるのは、とても珍しいことです。
「日本の絵本・歴史的考察IV : 占領下の翻訳絵本 / ウェズレー・デニス作『フリップ物語』の場合(1998年)」PDF
■今回の差し入れ
今回差し入れに、薬膳料理研究家の加藤先生が、リンゴとカボチャのマフィンを作って来てくれました。甘みはレーズンで。小麦粉と米粉とごま油とオリーブオイルお生地で、アクセントにピンクペッパーがのっていてとても美味しかったです。
もう一品は、たたきゴボウの胡麻和えでした。ごちそうさまでした!
(レポート:桜沢如一資料室 室長 高桑智雄)