【活動報告】6月プチ勉強会「身土不二を考える」&整理活動
5名の方が初参加で、自己紹介や内容の濃い勉強会、たくさんのスイーツの差入れで、整理活動の時間はなくなってしまいましたが、とても楽しい交流ができました。
今回のプチ勉強会のテーマは、「身土不二を考える」でした。
現代のマクロビオティックにおいて「身土不二」は、象徴するコンセプトではありますが、具体性を失ってあまりかえりみられなくなっています。現代社会においてこの身土不二をどうとらえるのか、また具体的にどう実践スタイルに落とし込んでいくのかが課題となっています。
■資料室の資料を参照して「身土不二」の歴史を考える
石塚左玄の「郷に入りては郷に従へ」
身土不二の考えの大本になっているのは石塚左玄(1851年~1909年)の「土地柄、季節にとれるものを食べよ」という思想です。文献として「化学的食養長寿論」(1896年)及び、「通俗食物養生法」(1898年)を参照し、「郷に入りては郷に従う食養法を実行すべきであって、これは化学的に反論の余地のない道理がある」という左玄の食養法の基本理念を振り返りました。
※「通俗食物養生法」の原本は、残念ながら資料室に所蔵していないので、「食医 石塚左玄の食べもの健康法」(農文協/橋本政憲・訳/1982年)の現代語訳本を参照しました。
また、桜沢如一が著した「石塚左玄」(1928年)を参照し、「彼は決して偏した肉食廃止論者でもなければ、菜食論者でもない。熱帯に住する人々の果食を認めると同時に、冷帯、寒帯の人々の肉食を正当としている」とし、左玄の説は「自然の、正義の領解」であるとし、「それは後の西端学大佐が「身土不二の原則」と名付けられた「食養道」である」との解説を確認しました。
西端学の温帯別四季及び、寒冷温熱の四性の分類
その石塚左玄の思想を、科学的な視点で体系化した弟子・西端学(1857年~1934年)の理論を、「日本精神の生理学」(西端学著・桜沢如一解説/1927年)で振り返りました。地球上の気候を寒帯、冷帯、温帯、熱帯の4つに分類し、それぞれの気候に特有の生物の自然的衣食住の原則があるとした西端理論は、『風土』を著した和辻哲郎の思想に匹敵する東洋思想の神髄を表しています。
そしてこの西端学こそが、馬相学の研究からヒントを得て、仏典から「身土不二」の言葉を援用して、食養法の重要な支柱にしてスローガンにしていったことを、参加者の元MI生、斉藤武次さんに解説していただきました。
桜沢如一の「身土不二」の展開
桜沢如一は、直接、石塚左玄に会っていないため、食養運動の最初期の影響は、西端学によるところが大きく、桜沢の食養運動の足がかりがまさにこの「身土不二」にあったといえます。「身土不二の原則」(1936年)、「生命現象と環境」(1942年)、「新しい栄養学」(1942年)の3つの文献を参照して、桜沢が、この「身土不二」に生物は環境によって成り立つという東洋的な全体論の神髄を見て、積極的に使うことによってマクロビオティックの中心的な原則としていった流れを確認しました。
「身土不二の原則」では、「生命は食物あるところにのみ現れる。生命は食物の変形である、流れである。生物は食物のおばけであり、食物は環境の産物であり、むしろ環境それ自らでもある。環境が変われば生物が変わる」と見事に「身土不二」の神髄がまとめられています。また「新しい栄養学」では、「なるべく50キロ以内を第一食糧圏とし、この範囲で主食と副食を確保する。次に200キロ以内を第二食糧圏とする。これを補助食とし、その産物は決して主食の十分ノ一以上とらない」などと具体的な方法論が書かれていて、当時の実践の状況を知ることができました。
まとめ
身土不二の思想は、環境と身体を一体と考える東洋哲学の全体論の神髄であり、マクロビオティックを象徴する重要な食思想であることが、あらためて歴史的に確認できました。現代のマクロビオティックは、食物の成分や効能に隔たっている感があり、「環境の産物である食をとおして、身体と環境が調和することによって健康になる」というコンセプトを伝えるには、まだまだ「身土不二」は有効だと思われます。
現代の都市生活において、桜沢の時代の食糧圏は確かに現実的ではありません。しかし「地産地消」や「フードマイレージ」など、ローカルコミュニティーが再評価される昨今、マクロビオティックも、「身土不二」を単なる「国内産」という言葉の代わりに使うにはもったいないように感じます。
もう少し有効な定義のもとにスローガンとして展開できる可能性があるのではないかと思いました。
参加者の声
・近所でいろいろな地場野菜が買えるので、身土不二に根差した生活ができるが、それらがすべてオーガニックではないので、どちらを優先するか迷う。
・韓国では国内産野菜の推奨が盛んで、身土不二のラベルが貼られている。
・郷に入っては郷に従えで、ベトナムに行って小さなバナナを食べたら、調子が悪くなった。環境に身体が慣れてくるのには多少の時間が必要。
・沖縄でとれるゴーヤと本土でとれるゴーヤは味もエネルギーも違う、沖縄のゴーヤは食べると体が冷えるが、本土のゴーヤはそうでもないところに身土不二を感じる。
・遠くのオーガニックを買うか、近くのふつうの野菜を買うか、やはり主婦感覚とし財布が気になる。
・環境と身体が一体なら、自分を傷つけることは環境も傷つけることになる。自分が地球の一部であるということをマクロビオティックの身土不二の思想から学んだ。
などなど
■スイーツ交流会
今回はなんと、参加者とリマからの差入れで、豪華なスイーツパーティーとなりました!
加藤先生の小豆の水無月とキュウリとスイカのお漬物。
千葉さんの八ヶ岳の地粉のパウンドケーキ、ルバーブジャム添え。
長谷川さんのコーンのマフィン。
渋沢さんの豆乳プリン。
リマのみかんゼリー。
どれもとても美味しかったです!!
というわけで、今回は整理活動に移れずにタイムアップ。
次回は、もう少し勉強会を軽くして、整理活動もやりたいと思います。
また日程が決まり次第募集開始しますので、ぜひよろしくお願いします!
レポート
桜沢如一資料室 高桑智雄